どんな資格なのか。
どうやってなるのか?
資格を取ると、何かいいことがあるのか?
診療看護師も特定看護師も最近できた資格だし、まだまだ人数も多くないから、まだ実態をよく知らないという人も多いと思うわ
診療看護師や特定看護師が活躍できる病院は、まだ限られていますから!
目次
診療看護師や特定看護師とは?認定看護師・専門看護師との違い
診療看護師や特定看護師とは、特定の医療行為を行うことができる看護師です。
ただ、無条件に医療行為を行えるというわけではありません。
あらかじめ作成された手順書に沿って、特定の医療行為を行うことができます。
今までは、医師に患者さんの状態を報告し、医師の指示を仰がなくてはいけませんでした。
しかし、診療看護師や特定看護師の資格があれば、医師に報告しなくても、手順書に沿って特定の医療行為を行うことができるため、タイムリーに患者さんの変化に対応し、適切な処置を行うことができるのです。
診療看護師とは
診療看護師とは、「一般社団法人日本 NP 教育大学院協議会」が認定している資格です。
診療看護師は、NP教育大学院協議会が定めるNP教育課程を終了して、NP資格認定試験に合格しなければいけません。
診療看護師の資格を取得すると、厚生労働省が定めた特定行為(21区分38行為)ができます(大学院によって例外あり)。
また、勤務する病院によっては、特定行為以外に、腹腔穿刺、気管内挿管、ERでの救急対応、手術助手等も行っています。
特定看護師とは
特定看護師とは、正式には「特定行為研修を修了した看護師」のことを指します。
特定看護師という名称の資格はありません。
特定行為研修を修了した看護師を、便宜上「特定看護師」と呼んでいます。
特定看護師は21区分38行為の特定行為の中から、自分が研修を受けた行為のみを行うことができます。
診療看護師と特定看護師の違い
診療看護師と特定看護師の違いについて見ていきましょう。
資格について
診療看護師:一般社団法人日本 NP 教育大学院協議会が認定
特定看護師:資格ではない。研修を修了したと認定される
できること
診療看護師:基本的に特定行為(21区分38行為)は全部できる。そのほか気管内挿管などができることもある
特定看護師:特定行為の中で研修を修了したものだけ
診療看護師や特定看護師になるには?要件を確認!
診療看護師や特定看護師になるには、どうしたら良いのでしょうか?
診療看護師・特定看護師の要件について詳しく説明していきます。
診療看護師になるには?
診療看護師になるには、次の条件を満たす必要があります。
<診療看護師の要件>
- 看護師の実務経験が5年以上
- NP教育大学院協議会が認定する看護系大学院でNP教育課程(2年間)を修了する
- NP認定試験に合格する
つまり、診療看護師になるには、大学院の修士課程で2年間学ばなくてはいけないということになります。
また、NP認定試験に合格したら、すぐに診療看護師としてバリバリ働けるというわけではありません。
病院によっては、研修医と同じように2年間の卒後教育プログラムを受けなければいけないこともあります。
特定看護師になるには?
特定看護師になるには、臨床経験がおおむね3~5年あり、特定行為研修を修了する必要があります。
21区分38行為の特定行為研修の中で、どの研修を受けるかは、あなた次第・研修を行っている機関次第になります。
2020年2月の時点で、研修期間は全国に191機関あります。
21区分全部の研修をしているところもありますが、1区分しか研修がないところもあります。
また、領域別のパッケージ研修を行っている研修機関もあります。
<領域別パッケージ>
- 在宅・慢性期領域
- 外科術後病棟管理領域
- 術中麻酔病棟管理領域
- 救急領域
特定看護師の研修機関は、その研修機関によって変わります。
特定看護師の研修は、共通科目(250時間以上)+区分別科目(15~72時間)で構成されています。
どの研修機関で、どの区分の特定行為の研修を受けるのか、領域別パッケージを受けるのかによって、研修期間は異なります。
ここでは、一例として「水戸済生会総合病院 臨床研修センター」の特定看護師の研修をご紹介します。
<特定行為の研修の流れ>
4月~9月 |
・共通区分 E-Learning(自宅) |
10月~11月 |
・共通区分の演習・実習・試験(週2回) |
12月~2月 |
・区分別科目 E-Learning、演習・実習・試験(週1回) |
3月 |
・修了式 |
共通区分でできることは、E-Learningで行い演習や実習は臨床現場で行うというスタイルが多いようです。
診療看護師や特定看護師のメリット・デメリット
診療看護師や特定看護師になるメリットやデメリットなどを確認しておきましょう。
キャリアアップするには、そのメリット・デメリットを把握しておく必要があります。
診療看護師や特定看護師のメリット
診療看護師や特定看護師になるメリットには、次のようなものがあります。
- 患者さんによりタイムリーにケアをできる
- やりがいを感じる
- より深く患者さんの病態を理解することができる
- 医師の診療を正確に理解でき、看護計画に活かすことができる
- 手当がつくので、給料アップにつながる
- 看護師として、できることが増える
診療看護師や特定看護師は、手順書に沿ってタイムリーに医療行為を行うことができるので、今まで以上にやりがいを感じることができます。
特に、今まで医師の指示待ちをしなくてはいけないことにイライラしたことがある看護師にとっては、診療看護師や特定看護師はやりがいを感じるができるでしょう。
診療看護師や特定看護師のデメリット
診療看護師や特定看護師のデメリットも考えていきましょう。
- 資格を取得した割には給与面でのリターンが少ない
- 責任が重くなる
- 看護師の本分の1つである療養上の世話から遠ざかる
- 周囲からの理解を得られないことがある
- 患者さんから不安がられることがある
診療看護師や特定看護師になるには、それなりにお金がかかります。
診療看護師は大学院で2年間学ぶ必要がありますので、進学費用はバカになりません。
特定看護師の場合は、数十万円はかかります。
先ほどの水戸済生会総合病院 臨床研修センターでは、共通区分だけで38万円、さらに区分別科目の受講料がかかります。
それだけお金がかかるのに、手当は数千円~数万円程度しかもらえません。
つまり、リターンが少ないんです。
これは、診療看護師・特定看護師に関する診療報酬がないからかもしれません。
また、まだ新しい資格であるがゆえに、同僚の医師や看護師からの理解が得られず、
「ミニドクターみたいじゃん。看護師じゃないみたい」
「看護師なのに、そんなことして良いの?」
と思われることもありますし、患者さんからは、
「看護師がやるの?怖いんだけど。ちゃんとした医者になってもらいたいなぁ」
と不安がられることもあるんです。
ただ、療養上の世話から遠ざかるのは、デメリットに感じる人がいる一方で、診療の補助に専念しやすいとメリットに感じる人もいると思います。
診療看護師や特定看護師と認定看護師・専門看護師の違い
診療看護師や特定看護師は、看護師のキャリアアップの選択肢の1つです。
看護師のキャリアアップの道には、認定看護師や専門看護師もありますよね。
診療看護師や特定看護師と認定看護師、専門看護師の違いについて見ていきましょう。
資格 |
必要な看護経験 |
教育・研修 |
役割・できること |
診療看護師 |
臨床経験5年以上 |
大学院で2年間 |
特定行為全部+αの医療行為ができる |
特定看護師 |
臨床経験おおむね3~5年 |
研修機関で250時間+15~72時間 |
修了した特定行為の医療行為ができる |
認定看護師 |
経験5年(うち専門分野で3年) |
研修機関で6ヶ月以上600時間以上 |
臨床現場で高いレベルの看護技術を行う |
専門看護師 |
経験5年(うち専門分野で3年) |
大学院で2年間 |
高い看護実践能力を持ち、保健医療福祉の発展と看護学の向上に寄与する |
2020年度からは特定行為ができる認定看護師として、特定認定看護師という資格の研修が始まります。
認定看護師と特定看護師のハイブリッドの資格ですね。
診療看護師や特定看護師とアメリカのナースプラクティショナー(NP)との違い
診療看護師や特定看護師は、アメリカのナースプラクティショナー(NP)と同じように語られることがあります。
確かに、診療看護師や特定看護師は、ナースプラクティショナーを参考にして作られた資格です。
でも、診療看護師や特定看護師は、アメリカのナースプラクティショナーとは違います。
資格 |
資格の認定 |
できること |
診療看護師 |
一般社団法人日本 NP 教育大学院協議会(民間) |
手順書に沿った特定行為すべて+α |
特定看護師 |
厳密には資格ではない |
研修を修了した特定行為 |
ナースプラクティショナー(アメリカ) |
国家資格(州で認定) |
プライマリーケア(初期症状の診断、処方、投薬) |
診療看護師や特定看護師は、医師が作成した手順書に沿って医療行為ができる看護師です。
でも、アメリカのナースプラクティショナーは医師の手順書は必要ありません。
ナースプラクティショナーはアメリカのプライマリーケアを担い、処方権も持っています。
また、資格の認定についても違います。
アメリカのナースプラクティショナーは国家試験を受けて、州ごとに認定する「公的な資格」です。
それに対し、診療看護師は民間団体が認定する資格、特定看護師は正式名称は「特定行為研修を修了した看護師」ですから、資格名ではないのです。
ナースプラクティショナーはアメリカ以外の国にもありますが、アメリカの場合は国民皆保険ではなく、貧困層は病院に行けないことがある。また広大な国土で、田舎は医師が不足しているなどの事情があり、ナースプラクティショナーの資格が創設されました。
アメリカのナースプラクティショナーは、日本とは医療制度やその他の事情が違う中で作られた資格なのです。
診療看護師や特定看護師が活躍できる病院を紹介!
診療看護師や特定看護師は、まだ新しい資格です。
そのため、どの病院でもその能力を存分に発揮できるというわけではありません。
せっかく診療看護師や特定看護師になったのに、その資格を活かすことができず、一般の看護師と同じような仕事しかできないのでは、キャリアアップした意味がありませんよね。
診療看護師や特定看護師が活躍できる病院をご紹介します。
特定看護師は手順書がある病院!
特定看護師が特定行為をするためには、医師が作成した手順書がないといけません。
いくら特定行為研修を修了しても、手順書がなければ、特定行為は行えないのです。
だから、特定看護師は自分が研修を修了した区分・行為の手順書がある病院で働かないといけません。
どの手順書があるかは、その病院によって異なります。
ただ、特定行為研修を行っている病院であれば、その研修の区分・行為の手順書はあります。
例えば、東京都で言えば、次の病院が特定行為研修を行っています。
- 武蔵野赤十字病院 5区分
- 河北総合病院 3区分
- 東京新宿メディカルセンター 2区分
- 東京都済生会中央病院 7区分
- 野村病院 1区分
- 日産厚生会玉川病院 5区分
- 花と森の東京病院 12区分
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院 6区分
- 国立国際医療研究センター 5区分
- 東京医科歯科大学医学部附属病院 12区分
- 東京大学医学部附属病院 6区分
- 町田市民病院 1区分
これはあくまでの一例ですが、この中で自分が受けたい研修が行われていれば、手順書は用意されていますので、特定看護師として働くことができます。
診療看護師は研修がある病院!
診療看護師は、卒後研修がある病院で働くと、診療看護師としてスキルアップしながら活躍することができます。
診療看護師の卒後研修がある病院の一例をご紹介します。
- 湘南鎌倉総合病院
- 東京ベイ・浦安市川医療センター
- 聖マリアンナ医科大学病院
- 自治医科大学附属さいたま医療センター
- 新東京病院
また、国立病院機構の病院では、卒後研修はありませんが、診療看護師(JNP)として活躍できる環境が整えられています。
診療看護師や特定看護師を目指すなら早めに転職を考えよう
診療看護師や特定看護師に興味がある看護師さんは、早めに転職を考えましょう。
なぜなら、診療看護師や特定看護師になるにはお金がかかります。
診療看護師になるには、大学院に進学する必要がありますから、学費だけでも100万円以上。
特定看護師は区分によりますが、50万円はかかると思っておいた方が良いです。
だから、診療看護師や特定看護師の資格取得支援制度がある病院へ転職しておかないといけません。
資格取得支援制度がある病院なら、学費や研修費用を病院が負担してくれたり、研修を受けている間の給料を保証してくれたりします。
また、そのような病院なら、資格取得後もその病院で診療看護師・特定看護師として活躍できる場を整えてくれていることが多いです。
ね、そうですよね?
また、研修終了後に、診療看護師・特定看護師として活躍できる場が用意されているかも調べてお伝えしますよ!