看護師は妊娠すると、職場で厳しい現実に直面します。妊娠は喜ぶべきことのはずで、祝われるべきことのはずなのに、看護師は妊娠したら嬉しい反面、不安と心配でいっぱいになるんです。
看護師が妊娠した時の厳しい現実や安心して出産に臨むための方法を教えます。
目次
看護師が妊娠で直面する3つの厳しい現実
看護師は妊娠すると、3つの厳しい現実に直面します。
- 看護師の業務は妊婦には厳しい
- 不規則な勤務は負担が大きい
- マタハラの被害に遭うことも
この3つの厳しい現実が待っているため、看護師が妊娠すると不安と心配でいっぱいになるのです。
看護師の業務は妊婦には厳しい
看護師が妊娠で直面する厳しい現実の1つ目は、きつい業務内容です。看護師の仕事は、妊娠してない状態でもきついですよね。
業務中は基本的に立っていなければいけないですし、力仕事も多いです。しかも、感染の危険もついて回ります。
普段でもきつい仕事を、妊娠中にしなければいけないのは、本当に大変です。妊娠初期はつわりがあります。
また、中期以降になると、お腹が大きくなってくるので、自分の身の回りのことをするだけでも大変なのに、患者さんの世話をしなければいけないんです。
さらに、妊娠中は禁忌であるX線を浴びる機会もありますよね。
不規則な勤務は負担が大きい
看護師が妊娠で直面する厳しい現実の2つ目は、不規則な勤務シフトです。病棟勤務の看護師さんは、妊娠していても、夜勤に入らなければいけないことが多いです。
日本医療労働組合連合会の「看護職員の労働実態調査「報告書」」によると、妊娠しても夜勤を免除してもらえなかった看護師は、34.5%もいます。
私が大学病院で働いていた時も、妊娠しても妊娠後期になるまでは、夜勤回数は減らしてもらえるものの、夜勤に入らなくてはいけなかった先輩看護師がたくさんいました。
そして、その結果、切迫流産になり、退職した人をたくさん見てきました。
看護師は切迫流産や切迫早産の確率が高いですが、それは夜勤が1つの原因と言われています。
夜勤と流産の関係については、「看護師は夜勤で流産しやすいって本当?流産しないためにはどうしたら良いの?」で詳しく説明しています。
マタハラの被害に遭うことも
看護師が妊娠で直面する厳しい現実の3つ目は、マタハラの被害に遭う可能性があることです。
「看護師は女性が多い職場だから、マタハラなんてないんじゃない?」と思うかもしれませんが、その考えは甘いです。
- 妊婦だからって甘えないで!
- あなたが妊娠しているから、その分のしわ寄せが私たちに来るんだけど!
- 妊娠中でも給料はもらってるんだから、私たちと同じ仕事をしてくれないと困る!
このようなことを面と向かって言われることもありますし、陰でコソコソ言われることもあります。
そうすると、妊娠しているというだけで、職場で肩身が狭い思いをしなければならず、必要以上に気を使ったり、ストレスを感じたりするのです。
看護師が妊娠したらまずすべき3つのこと
看護師が妊娠したら、まずは次の3つのことを行いましょう。
- 師長に妊娠を報告する
- 産休・育休、出産に関する手当について調べる
- 今後どうするのかを考える
この3つのことをしておくと、これからのことが少しずつ具体的に考えられるようになります。
師長に妊娠を報告する
妊娠したら、まずは師長に報告しましょう。一般的には、妊娠を上司に報告する時期は、流産のリスクが下がる心拍確認後、もしくは12週以降です。安定期に入ってからという人もいますよね。
でも、看護師の場合は、妊娠がわかったら早めに師長に報告しましょう。先ほども言ったように、看護師の仕事は業務内容的にも、シフト的にもきついです。
妊娠を黙っていて、無理に仕事をするくらいなら、早めに妊娠を報告して、仕事内容やシフトを配慮してもらったほうが良いんです。
まだ看護師1年目だから、妊娠報告しにくいと思う人もいるかもしれません。
でも、看護師何年目だからというのは関係ありません。看護師何年目だろうと、妊娠報告は早めにしてください。
妊娠している新人看護師さんは、「新人看護師が妊娠発覚後にどうすべきかを解説します!」を併せて読むことをおすすめします。
産休・育休、出産に関する手当について調べる
次に、産休や育休、出産に関する手当を調べましょう。産休・育休はいつから休めるのか、またそのための手続きはどうすれば良いのか、いつまでに手続きすべきかを今のうちから調べてください。
また、出産にはお金がかかります。産休・育休中は無給というわけではありません。お金がもらえます。それについても、損をしないようにきちんと確認しておきましょう。
看護師の産休・育休については、「看護師の産休・育休|期間・給料、おすすめの過ごし方を徹底解説」で詳しく説明しています。
今後どうするのかを考える
妊娠が判明したら、今後どうするのかを考えましょう。選択肢としては、今の職場で産休・育休を取って復帰することと、出産前に退職することの2つがあります。
これについては、どちらが良いかはあなたや旦那さんの価値観や考え方、経済的な事情、さらにあなたの職場事情にもよるので、「これがベスト!」と言うことはできません。
後悔しないように、旦那さんとしっかり話し合っておきましょう。
看護師が妊娠後に働けるかどうかを決める3つのポイント
看護師が妊娠後に今の職場で働けるかどうかを決める時のポイントは、次の3つがあります。
- 師長がシフトや業務内容を配慮してくれるか
- 職場の理解が得られるか
- 育児休暇後でも働けるのか
この3つのポイントを見極めるようにすると、今の職場で続けるべきか、それとも妊娠を機に退職することを考慮すべきかが見えてくると思います。
また、「看護師は妊娠で辞めるべき?妊娠で辞めるべきかどうかの見極めポイント」も参考になると思いますので、一緒に読んでみてください。
師長がシフトや業務内容を配慮してくれるか
まずは、妊娠を報告した後に、師長がシフトや業務内容を考慮してくれるかどうかをチェックしましょう。
妊娠した看護師の働き方は、今までと同じようにはいきません。母体保護の観点から、無理なく働けるように配慮されなければいけません。
労働基準法の第66条では、妊婦が請求したら残業させてはいけないし、夜勤もさせてはいけないと定めています。
つまり、自分から求めれば、妊娠中の看護師は残業も夜勤も免除されるのです。
妊娠した看護師は夜勤にいつまで入らなくてはいけないのかと疑問に思うかもしれませんが、妊娠したらその時点で、夜勤に入る必要はなくなります。(自分が希望すれば、夜勤に入ることは可能ですが…)
また、妊娠中の力仕事はお腹に負担がかかりますから、控えるべきですよね。
そういったことを師長は考慮してくれるのか、妊娠中でも無理のない働き方ができるように配慮してくれるのかを確認してください。
師長に妊娠を報告したら、すぐに夜勤を免除してくれて、日勤のみで働くことができました。
日勤の仕事もナースステーションで座っていられる時間が長いリーダー業務の日を多くしてくれるなどの配慮があったので、無事産休まで働くことができました。
職場の理解が得られるか
次に、職場の理解が得られるかどうかもチェックしましょう。たとえ、師長がシフトなどを配慮してくれても、同僚の看護師の協力がないと、働きにくくなってしまいます。
例えば、患者さんのステルベン処置。迷信だとはわかっていても、妊娠中はステルベンの処置は避けたいですよね。
同僚の看護師の理解があれば、あなたの受け持ちの患者さんがなくなった時でも、「私がやっておくから。」と代わってくれるでしょう。
でも、理解がない職場だと、「妊婦だからって甘えないでよ!」と思われてしまうのです。
また、つわりが辛くてナースステーションで休んでいる時に、理解がある職場なら、あなたのやるべき仕事をみんなで分担してやってくれますが、理解がない職場だと、「妊娠しているからって休んでずるい!」と思われてしまうのです。
私は、妊娠後に職場に居づらくなってしまったので、産休を待たずに退職しました。
妊娠判明後に夜勤のシフトを代わってもらう時は、「妊婦は夜勤しなくていいんだ~。羨ましいなぁ~。」と嫌味っぽく言われてしまったり、つわりで勤務中に座らせてもらったら、「あ~、私も休みたいなぁ」とわざと聞こえるように言われたり。
日に日にストレスが溜まっていくし、この職場では育休から復帰した後は絶対に働けないと思って辞めることにしました。
育児休暇後でも働けるのか
最後に、育児休暇から復帰しても働けるのかを確認してください。育児休暇の取得実績がある職場はとても多いと思います。でも、「育児休暇を取得できる=育児と仕事を両立できる」というわけではないのです。
育児休暇後でも働けるかどうかは、次のことをチェックしてみてください。
- 希望すれば、日勤のみで残業が少ない部署に配属してもらえるか
- 実際に育児と仕事を両立しているママさん看護師は多いか
- 育児短時間勤務制度は利用できるか
これらの条件を満たしている職場なら、育児休暇から復帰しても、無理なく育児と仕事を両立できると思います。
逆に、これらの条件が整っていないと、育児休暇から復帰後に辛い思いをすることになると思います。
もし、保育園激戦区に住んでいる人は「院内託児所がある」という条件が必要ですし、経済的な理由・キャリア的な理由で夜勤をやりたい人は24時間対応の院内託児所があることを条件に加えると良いでしょう。
私は、産休に入るのと同時に退職しました。妊娠中の勤務はいろいろ配慮してもらえてありがたかったのですが、その職場には託児所がなかったので、育児をしながらは働けないなと思って。
私が住んでいる地域は保育園の抽選倍率が高い激戦区なので、抽選に落ちる可能性が高いんです。
だから、院内の託児所がある職場の方が確実に復帰できると思ったので、退職することにしました。
看護師が妊娠したら注意すべき2つのこと
看護師が妊娠したら注意しなければいけないことがあります。
- 妊婦様にならない
- 体調第一を忘れない
看護師が妊娠すると、厳しい現実に直面することを説明しましたが、その現実に直面しつつも、安全に出産に臨むためには、この2つは忘れてはいけないのです。
妊婦様にならない
看護師が妊娠中に働いていくためには、師長や同僚の協力が必要不可欠です。
それが当たり前と言えばその通りなのですが、業務量やシフトで助けてもらったら、師長や同僚の看護師に、こまめに感謝の気持ちを伝えましょう。
これは看護師に限ったことではありませんが、「妊婦様」になってしまう人がいます。「妊娠中なんだから、みんなが私を助けてくれて当たり前」と思っているタイプですね。
そういう妊婦様になると、誰も助けてくれません。それどころかマタハラの一因になることもあります。
だから、「妊娠中の働き方は無理のない範囲で」というのは当たり前なのですが、それを当たり前と思わずに、感謝の気持ちを持つようにしましょう。
ありがとうの気持ちを伝えるだけでなく、負担にならないようなデスクワークは、可能な範囲で積極的に引き受けるようにすると、みんなに気持ちが伝わると思います。
みんなにあなたの感謝の気持ちが伝われば、さらにみんなあなたに協力してくれるので、働きやすくなるはずです。
体調第一を忘れない
妊娠中に「妊婦様」になる人もいますが、逆に妊娠中に頑張りすぎてしまう人もいます。
「みんなに迷惑かけたくないから!」という思いで、ちょっとお腹が張っていても、つわりで気持ち悪くても、休まずに頑張ってしまうのです。
その気持ちもわかりますが、妊娠中は体調第一を忘れないでください。ハッキリ言えば、看護師としてのあなたの代わりはいます。あなたがいなくても、今の職場な何とかなるでしょう。
でも、お腹の赤ちゃんのママはあなたしかいません。あなたが体調不良になれば、お腹の赤ちゃんの生命は危険にさらされます。
だから、妊娠中は体調第一を忘れないようにしてください。
看護師が妊娠しても、できれば仕事を続けたいけれど…
看護師が妊娠した場合、仕事を続けるべきかどうか迷うと思います。先ほど説明した3つのポイントをチェックすれば、続けるべきかどうかが見えてくると思います。
もし、可能であれば、妊娠を機に退職するのではなく、産休・育休を取得してから復帰したほうが良いと思います。
退職すれば、各種手当が貰えませんが、産休・育休を取得したら、出産手当金や育児休業給付金がもらえます。
ただ、先ほども言ったように、妊娠中の看護師は体調第一でなければいけません。
師長が夜勤免除をしてくれない、同僚の理解が得られないという場合は、お腹の赤ちゃんのためにも、退職しなければいけないこともあるでしょう。
この職場では、安全な妊婦生活が送れないと思ったら、退職を決断するのもありだと思います。
退職を選んだ看護師さんは早めに転職サイトで転職活動を!
看護師が妊娠を機に退職するなら、早めに転職活動を行いましょう。さすがに、妊娠中は転職できません。どこも採用してくれないと思います。
でも、出産後に少し休んでから看護師としてまた働きたいと思っているなら、妊娠中の今のうちから、転職活動を始めるべきなんです。
妊娠中はあまりよくわからないかもしれませんが、出産後はとんでもなく忙しくなります。忙しいというよりも、余裕がなくなります。自分のために使える時間が全くないんです。
授乳やら夜泣きやらで寝不足になるし、日中は日中で子供の世話をし、子供がようやく昼寝したと思ったら、家事をやらなくてはいけないし。
だから、出産後1年以上はじっくり転職活動をする余裕がないんです。
時間がある妊娠中から転職活動を始めて、どんな職場だと育児支援が手厚いのか、どんな条件の職場なら育児と仕事を両立させることができるのかを少しずつ調べておきましょう。
そして、そのためには転職サイトを利用すると良いですよ。転職サイトに登録して、担当コンサルタントに出産後に転職したいことや育児と両立しながら働きたいことを伝えておきましょう。
そうすると、コンサルタントはどんな職場だと両立させやすいのかなどをアドバイスしてくれます。
また、転職したいおおよその時期を伝えておけば、そのころに良い求人が出たら、すぐに教えてもらうこともできるんです。
看護師が妊娠したいなら、早めの転職がおすすめ!
看護師が妊娠したいと思っているなら、今のうちに転職しておくことをおすすめします。
妊活中の看護師さんは、妊娠してから厳しい現実に直面せずに済むような「妊娠中の看護師に優しい職場」に転職すれば、妊娠しても不安なく働くことができます。
また、産休・育休をしっかり取得してから復帰し、そこから育児と仕事を無理なく両立させることができるのです。
妊娠してからの転職はハッキリ言って無理です。詳しくは、「看護師の中途採用、妊娠していても採用してもらえるの?」を読んでください。
妊娠中の看護師を雇用するのはリスクが大きいですから。だから、妊娠していない今のうちから転職しておくべきなんです。
また、妊活中の看護師の中には、妊娠しにくいことに悩んでいる人もいると思います。妊娠しにくいことに悩んでいる看護師も、早めに転職しておきましょう。
ストレスが少なく、規則正しい生活を送れる職場なら、ホルモンバランスが整いやすくなるので、妊娠の可能性が高くなることがあります。
妊活中の看護師が転職する時も、転職サイトを使うことをおすすめします。
担当コンサルタントが妊娠・出産後も働きやすい職場、ストレスが少なく規則正しい生活を送れる職場を厳選してくれるはずですよ!
まとめ
看護師が妊娠したら、いろいろ不安になると思います。実際に、妊娠中に無理をしてしまって、切迫流産・切迫早産になり退職したという看護師さんもたくさんいます。
そうならないためにも、体調第一を忘れずに、妊娠したらまずすべきことを実践していきましょう。
お腹の赤ちゃんを守れるのは、あなたしかいませんから、無理だと思ったら、退職を決断することも必要です。
退職することを決めたら、転職サイトを使って出産前の今から早めに転職活動をすると、いざ復職する時にも慌てずに済みますし、仕事と育児を両立できる職場に確実に転職することができるはずです。